第三篇 病気の真相 肺病(一)

今茲で主なる病気に就て説明をしてみよう。

結核に就ては、前篇にも述べたが、尚一層詳しく述べてみよふ。現今、肺結核は激増したといふが、実はそれは謬りである。先づ、肺結核の初期から述べてみる。之は感冒の時に述べた如く、感冒の浄化作用、何回もの停止によって溜結せる毒素が青年期の活力旺盛時代に入り、防止不可能になって解毒法も効果ないといふ状態である。此時は殆んどが肩部(特に左肩)頸部の下辺に溜結せる毒素の浄化作用としての微熱である。此時、医家の診断は、大抵肺尖加答児又は肺門淋巴腺といふ。療法として絶対安静、営養食、注射、服薬、頭冷、湿布等であるが、之等は何れも浄化作用停止法であって、安静は胃腸を弱らせ、服薬、注射、頭冷、湿布等は何れも漸進的衰弱をなさしめるので熱は下降し、熱が下降するから毒血が溶解しないから喀痰は減少する。喀痰が減少するから、その喞筒(ポンプ)作用である咳嗽が減少する。一見病気が軽快に向ふやうにみえる。其際患者が安静を破って運動すると発熱する。それは運動によって活力が出るから、浄化作用がおこるからである。医療は如何に之を固めんとするかはよく判るのである。斯様な状態で幾月も幾年も持続する内、追加物たる薬毒の浄化作用が起るのであるが、此薬物浄化は高熱を伴ふものである。長い安静によって相当衰弱せる患者が高熱に遇っては、その衰弱は非常な速度を増し、終に死に到らしむるのである。此末期に於て、薬毒集溜個所は全身に及び、特に肋骨、胃腸、腹膜部、咽喉部、腎臓部、頭部、股間淋巴腺等である。

(医学試稿 昭和十四年)