結核は絶対に感染せぬ

医学上、結核は感染する事になって居るから、世人は非常に恐れてゐるが、何ぞ知らん、絶対に感染はしないのである。之に就て私の実験を報告する。それは私の家族五、六才から十七、八才までの子供六人、書生女中等四、五人居る。その中へ肺結核患者、之は私の診断ではない、某々官立の大病院に於て肺結核と診断されたものを約半ケ年、家族同様起居させたるも一人も感染せず、而も、右の如き結核患者を拾数年間に拾数人家族的に取扱ひしも右の如く感染の疑ひさへ些かなき事実は、感染しない事を證明して余りありといへよふ。又、之以上実験の方法はないであらふと思ふのである。勿論、消毒等は一切しないで、普通人と同様の扱方であった、従而、結核感染の試験ならば、私は固より家族の誰でもが何時でも実験の材料になるから、感染さしてやらふと思ふ人があったら遠慮なく申込んでもらひたい。何時でも喜んで応ずる事を明言しておく。たゞ茲にいっておきたい事は、結核が感染するやうにみえる事実は確かにあるが、それは黴菌の為ではない。霊的作用によるので、それも如何程でも徹底的説明は出来るが、そういふ事に触れると現代人の多くは迷信的に解釈し、他の私の説まで疑ひを挿まれる危険があるから、それはわざと説明しない事にして置く。 右の如く、感染の危険なき病気に対し多額の国費を以て予防の施設をし、親子兄弟まで親しく接する事さへ危険とせられ、其他種々の社会的損失を数ふれば、此一事だけでも社会全般に知らせる事が急務であり、それが如何に国家的に利益なるか、蓋し料(ハカ)り知るべからざる程の大いなる事柄であらふ。

文明各国は、結核予防施設のよろしきを得て、近年結核減少の趨勢を辿りつつありといふ報告によって、我国もそれにならふのであるが、何ぞ知らん之は皮相の解釈であって、実は根本的に間違ってゐるのである。之は実に予想も出来ない程の原因と理由に因るのであって、読者は先入観念に捉はれず、活眼を開いて読まれん事である。

近来、逐年に渉り文明国人の出産率の低下は熟知の通りであるが、此事と結核の減少とは正比例してゐるといふ事実であるにみて、如何に関聯があるかといふ事が判るのである。

それは何かといふと、文明人の体位の低下が結核を減少させる事になるのである。何となれば、結核とは前項に述べた通り、旺盛なる浄化作用に因るのであるから、体位の衰退は自ら結核が発病し得ないのである。言ひ換へれば、青年が老年期の体位である訳である。故に、日本に結核が多いといふ事は、未だ国民に元気があるからで、従而、出産率も文明国中、最優秀といふ訳である。然らば、文明人が近代に至り、斯く迄も体位が低下せしや。それには大いなる原因があるのであるが、それは次の項に詳述する事にする。

(医学試稿 昭和十四年)