肺結核

近来、肺結核は年々増加の傾向を辿り、国民病といってもいい位蔓延しつつあるのである。之は如何いふ訳かといふと、前述の感冒が浄化作用の停止を繰返しつつあるうち、終に解熱法にても解熱せず、此熱によって疲労感、食欲不振、羸痩、咳嗽、盗汗、喀痰等の症状を呈し、それがなかなか執拗なので、結核初期の告を言ひ渡されるので、そうして、その多くは十五歳以上弐十五才位迄が一番多く、弐十才前後が特に多いので、之は何故かといへば、前述の各種の症状は、何れも浄化作用のそれである。最も生活力の旺んな年頃に起るのは当然である。それは、種々の方法を以てしても旺盛なる生活力に負けるからである。然るに、医学の説明によれば、過労とか、睡眠不足に帰してゐるが、もし、過労の為とすれば、勿論過労や睡眠不足の為とすれば、それ等による衰弱の結果とするのであらふが、衰弱の為の結核発病とすれば、老年者程結核に罹り易い訳ではないか。元気旺盛の青年に多く、元気消耗の老年に少いといふ事は、現代医学の説明は、実際とは相反してゐると思ふのである。之を以てみても、結核的症状は浄化作用の旺盛なる為であるといふ事は判るのである。

今一つ別の方面から説明してみよふ。現在結核療法としては、第一に絶対安静、営養食、薬物療法等であるが、之は絶対安静を行へば、漸進的衰弱を来す、衰弱を来せば、衰弱を来す程、浄化作用も弱り、従而、熱は下降する。熱が下降すれば、喀痰は減少する。喀痰が減少すれば、咳嗽が減少する。丁度、病的症状は軽減するから治癒に向ふやうにみえる。其際少し全身を動かすとか、運動をするとかすれば、病的症状は増加する。それは運動によって浄化作用が起るからである。故に、之等現代療法は、病気治癒せんとして、実は治癒しないやうにするのである。そうして、幸ひにして浄化作用停止し長時日を経て、毒素が固結する迄になると、病気が固まったといって、大体医師は全快したやうにいひ患者もそう想って喜ぶのであるが、実は病毒を排泄したのでなくて、排泄を止め、体内に固めたのであるから、丁度、爆弾を抱いてゐるやうなもので、何時爆発するか解らないのである。此爆弾が爆発した時、それを再発といふのである。

(医学試稿 昭和十四年)