誤診誤療の実例 医術で不具になった話

之は某看護婦の話である。七歳の女児、右頬に腫物が出来たので、入院して手術をしたのである。然るに、手術時期が早期の為、眼瞼下に、又別に腫物が出来たので、早速それをも手術した処、結果不良で悪化し、終に最初の箇所と次の箇所と連絡して了ったのである。其上手術によって、自然排除を防止された膿は、眼からも、鼻孔からも、絶えず溢出するといふ苦痛をさへ、加重せられたのである。そうして、漸く数ケ月にして、治癒された結果はどうであったらふ。大きな引吊りの為に、俗に謂ふ「ベッカンコウ」の様な醜くさの顔になって了ったのである。それが為に、其母親が歎いて医師に訴えた処、医師は「いづれ整形外科へ行って、治して貰ったらいいだらふ」との事であった。

之に就て批判を加えればこうである。其腫物の原因としては、自然浄化によって、膿が頬から排除されやふとして腫物が出来たのであるから、何等の治療を加へず、其儘放置してをけば良かったのである。そうすれば、腫れる丈腫れて小さい穴があいて、そこから膿が全部排泄され、完全に治癒されて、痕跡も留めないやうになるのであって、其期間も長くて一ケ月位で済むのである。それに何ぞや、多額の費用と日数と、より痛苦を与へて終に生れもつかぬ不具者たらしむるといふ医学は実に恐るべきものである。

誤れる医術の弊害を、世人に知らしむる事が、刻下何よりの急務である事を痛感するのである。

(新日本医術書 昭和十一年四月十三日)