一、 一般指圧療法との比較

指圧療法の創始されたるは、最近に属し、医薬鍼灸の如く、未だ普遍的治療迄に到らざるも、其効果の顕著なる、日に月に一般の信頼を博しつつあるは何を物語ってゐるのであらふか。大いに研究すべき問題であらふと思ふ。

然るに、一般の指圧療法は、余の見る所に依れば、その治癒力として相当の効果あるも、人体電気即ち人間霊力が、其指頭より放出するに依るものであるから、療術を行ふ場合は、術者は努力して、精神統一をなし、治療に取掛るを以て、術者の霊的エネルギーを消耗する事甚しく、非常に疲労を感ずるものであり、且つ治療時間も普通一時間以上を要するのである。指圧療術者が往々短命に終る者多きは之が為である。然るに、余が創始の指圧療法は、根本が、観音力なるを以て、術者は唯、肉体を一の機関として提供するに止まるを以て、何等疲労する事なく、時間も普通は十分乃至三十分位の治療を以て、他の指圧療法に較べて、数倍の効果を奏するのである。

(日本医術講義録 昭和十年)