胃疾患

日本人に最も多い病気として胃疾患がある。此病気は周知の通り種々の症状があるが、最初は殆んど軽症であるに係はらず、療法や摂生(セッセイ)の誤謬の為漸次慢性となり、一進一退の経過を辿りつつ終に重症にしてしまふといふのが大部分である。

最初は消化不良、胸焼、胃痛等の軽い症状であるが、それ等の原因は胃の外部に溜結せる毒素の圧迫であって、それよりもそれを治癒せんが為の消化薬服用と消化し易い食餌摂取が問題である。それ等の方法は一時は有効であるが、連続するに従ひ終に胃の弱化を促すのである。従而復服薬する。弱化するといふ訳で、遂に消化薬を放す能はざるに到り慢性症となるのである。又消化薬連続は胃壁をまで柔軟にする。それへ固形物が触れる場合亀裂を生じ出血する。それが胃潰瘍である。故に胃潰瘍の原因はその殆んどが消化薬連続が原因であるから、斯かる場合薬剤を廃止し柔軟食を摂る事によって漸次快方に向ふのである。又胃壁に腫物を生じ出血する場合もあるが、之は時日を経て血便又は吐血する。此際医家は胃潰瘍と誤診する事がある。右は自然療法によって全治するものである。又大酒家に胃潰瘍が多いが、之は酒害よりもよく酒後に用ふる薬剤の為で、酒の為に充血せる胃壁に対し、薬毒は特に悪影響を与へるのである。

次に、胃痙攣は激痛が特徴であるが、之には二種あって、一は第一浄化作用に因る毒結強化の為胃を圧迫する場合と、第二浄化作用に因る毒結溶解の場合とである。前者は無熱にして後者は有熱で、これは治癒し易いのである。之等の原因は服薬が時日を経て胃に還元し一種の毒素に変じて固結したものである。次に胃酸過多症は消化薬服用が原因で消化薬の変化に因るのである。

世人に恐れられてゐるものに胃癌がある。胃癌には真の胃癌と擬似癌とあり、前者は殆んど霊的原因が多く霊的は後に説くが、茲では両方共体的に説いてみよう。

胃癌の初期は、胃の外部上方又は進窩部に小固結を見、食欲やや不振位にて他の何等の苦痛なきもので、此際医診に於ては癌の疑を起し、多くは手術によって除去するが、手術後大抵一時は良好であっても再発し易く、医学上の統計によれば、手術後平均二ヶ年半の生命を保つに過ぎないといふ事である。医療に於ては手術に依らざる場合ラヂュウム放射療法を行ふ事になってゐる。然るに此方法は既記の如く癌組織を破壊すると共に内臓をも破壊するので、事実は反って悪化するのである。又真症癌は末期に到るに従ひ、癌毒は胃部は固より腹膜腎臓部等までも犯し、最も悪性なのは上半身全部を犯す事さへある。且つ盛んにヌラを嘔吐し食欲の減退著しく衰弱死に到るのである。此ヌラが真症癌の特徴である。そうして普通は緩慢なる進行をとるが、人により非常に速かに進行するのもある。稀には一両日間に半身全部を犯すものさへある。真症癌は、本医術によるも初期なれば完全に治癒するが、中間以後は先づ恢復困難と見るべきである。又此病気の特徴として、発病早期から急激に痩せる事であって、甚しきは一ヶ月間に一貫目位づつ体重減退するものさへある。且つ皮膚は光沢と弾力を失ひ、極度の貧血に陥るが、割合不快や苦痛はないのである。故に此病気を診断の場合右の如き症状によってよく知り得るのであるが、医家は種々の理学的方法を行ひ、診断は容易に下せないのである。又医学に於ては結核を、滅減性疾患といひ、癌を増殖性疾患と謂ふのである。そうして癌の毒素は特異性のもので膿ではないから医学に於ても癌には菌がないとされてゐる。又真症癌は霊的であるから、唯物的医学に於ては全く病原不明と共に治療も確立し難いのである。

擬似癌の原因は、膿及び毒血の固結せるもので、初期に於ては真症癌と同じく胃の外部に固結を生じ、漸次腹膜、腎臓部等に及ぶのであるが、之は治癒し易く、衰弱が或程度を越へざる限り、殆んどが全治するものである。

(天国の福音 昭和二十二年二月五日)