谷川徹三氏との御対談(完) 仏像について

明主様 仏教美術の方はどうですか。

谷川氏 私は何でも好きです。今度お買いになられた三体の金銅仏では、小泉さんのでない後の二つの方が良いですね。私が見た時には白鳳としてあるが、飛鳥の方が美しいと思いました。飛鳥の方が野蕃な顔をしてますが、良い物と思いました。肩から背中から、力があって良い物ですね。小泉三伸の仏は大分劣りますね。それから五室の四十八体仏の中に、ああいう野蕃な顔をしているのがありますね。

明主様 四十八体仏の中ではどれが良いですか。

谷川氏 図録を見ないと宙では言えませんが、しかしそれぞれに良いですね。初めは妙に線のつまった物や、野蕃なのは、いやだと思いましたが、やはりそれぞれに良いですね。金銅仏とは言いますが、あの中に木彫のが一体はいっているそうです。

明主様 金銅仏は推古と白鳳とはまるで違いますね。

谷川氏 しかし随分多方面にいろいろお持ちですから大変ですね。私も、一つの物しか蒐めないというのは蒐集の邪道だと思います。何でも相通ずるものがあると思います。

明主様 そうです。

谷川氏 私は今日は風邪を引いたかして、汽車の中でも憂欝だったのですが、美術品を見ていると疲れません。

明主様 私も、いろいろ用事はありますが、こういう時間だけは特別です。

谷川氏 私もそうです。他に用事があったりしますが、骨董屋に行く時だけは別です。いろいろ見せていただきまして有難うございました。今美術館に陳列してある物で、ゆっくり見たい物もありますから、又お伺いします。

一同 どうも長い間有難うございました。

(昭和二十八年六月二十四日)