明主様とブレーデン博士

六月十五日夜強羅ホテルにて御対談

世界の宗教事情を研究するため、今回日本を訪づれた米国イリノイ州ノースウェスタン大学の宗教史及宗教文献学教授のブレーデン博士は、恰もわが世界救世教の箱根強羅に於ける地上天国模型完成祝典日に当る去る六月十五日、奇しくもわが明主様と強羅ホテルに於て親しく対談されたのであった。以下その御対談の顛末である。

ブ博士 私は日本に来て色々の宗教を視察し、新しい宗教が非常に活気ある働きをしていることを感じました。アメリカに於ても現在新しい宗教が盛んに活動しています…私は宗教視察のため日本に参りましたので、少し御意見を拝聴したいのですが、如何でしょう。
明主様 結構です、何でもきいて下さい。
ブ博士 第二次世界戦争が宗教に及ぼした影響についてお話し下さい。
明主様 善悪両面の影響をうけましたが、悪い影響は一時的で、善い方の影響は永久的ですから結局プラスだと思います。
ブ博士 特に貴方の宗教にはどんな影響がありましたか。
明主様 終戦までは非常な弾圧をうけたのですが、終戦後は信教の自由が認められて大変やりよくなりました。
ブ博士 現在どの位の信者がありますか。
明主様 実際に活躍しておる信者は三、四十万位でしょう。
ブ博士 終戦前はどの位でしたか。
明主様 数百人位でした、殆んどが終戦後の信者です。
ブ博士 戦後どうしてそんなに急激にふえたのですか。
明主様 それは戦後の混乱せる人心に最も強き光明を与えたためで、就中医薬によらずして病気が治るという……この奇蹟が最大の原因だと見てよいと思います。
ブ博士 その奇蹟について説明して下さい。
明主様 病気の原因は唯一つで、それは霊の曇りです。肉体に現れる病状はいろいろですが、原因は何れも一つですから霊を浄める事によって癒やされます。しかし此事は、唯物知識に培われた人々には容易に理解しがたいでしょう。丁度大学の講義を小学生にきかすようなものです。いろいろ私の方で出しておる出版物がありますからよく読んでいただきたい。

ブ博士 メシヤについて貴方はどう御考えですか。
明主様 私がメシヤの仕事をすべく神命をうけておると信じますが、今はその時期でないのでボヤかしています。
ブ博士 クリスチャン・サイエンスをどうお考えになりますか。
明主様 クリスチャン・サイエンスは、自己の想念によって病気を治す所謂自力宗教ですが、世界救世教は信じても疑っても病気が治るので、此点完全な他力宗教と言うことが出来ます。キリストも病気を治しましたが、私は私自身病を治すばかりでなく、多くの人々にもその力を授けることが出来るのです。ここに集っておる人達-そこに集っている幹部三十余名を指し-は皆その力を授けられております。若し私が嘘を言ったら此人達は私を信じなくなるでしょう。ここで尚私の言いたいことは、今までの文明は物質文明で、その中心がアメリカである。東洋の文明は精神文明であり、日本がその中心である。そこで此両文明が融合されねばならぬ。この両文明……タテ、ヨコ両文明の結ばれた形が十字で、十字架の意義はそこにある。して今は将にその時で、現にアメリカと日本とが結ばれるところに神意が存するのであります。
ブ博士 非常に興味あるお話を拝聴しました。私も全く同感であります。
明主様 私も非常に愉快です。今ここであなたとお話しすることに既に深い意義があるのです。

ブ博士 共産主義に対する御意見をうけたまわりたい。
明主様 共産主義の根本は人類愛と相反するものです。ある特別の階級だけのことを考えるのは神の大愛……平等の愛にもとるものです。戦争中八紘一宇といってた連中の考えかたと同様偏愛ですから、神威の前にはやがて消え去るにちがいありません。神を信ずる私としましては問題にしておりません。
ブ博士 貴方の信者で共産主義者がありますか。
明主様 信者で共産主義者はありませんが、共産主義者であった者で、奇蹟を見て神を信じて、信者となった人はあります。神を信ずれば共産主義者はなくなります。
ブ博士 貴方の教団が陰謀を画策したといわれたことがありますか。
明主様 終戦前にはそんな噂をする者がありましたが、戦後はそんな噂はありません。
ブ博士 目下日本の議会に提出されておる、破壊活動防止法案について、どうお考えになりますか。
明主様 乱暴な行為を防止することは止むを得ないことだと思っています。共産主義者は、日本人でありながらソ連を援助するのだから、日本人の姿をしたソ連人のようなもので、そんな日本人があってはなりませんし、それに暴力によって革命をやろうとするのですから、これを防止する法案は必要だと思います。
ブ博士 この法案が教団に影響を与える心配はありませんか。
明主様 それは運営の問題ですが、民主々義が発達して行けば、此法案が悪用されることもなかろうと思います。兎に角、暴力で社会を破壊しようとするものを取締ることは先決問題ですから必要でしょう。
ブ博士 共産主義者が日本で天下をとるというような事はないでしょうか。
明主様 絶対にありますまい。日本はそれほど文化が低いとは思われません。
ブ博士 世界には共産主義を怖れる人があります。アメリカ人の中にもあります。……
明主様 共産主義が世界各国にある程度の脅威を与えておることは事実です。その脅威を防ぐために防止法案も必要でしょうし、またある程度の軍備も必要でしょうし、神の存在をはっきり示すことも必要でしょう。
ブ博士 どうか、その事をトルーマン大統領にも言ってあげて下さい。
明主様 私の出版物が沢山ありますから、お持ち帰りになって貴方から大統領に渡して下さい。
ブ博士 残念なことに、私が世界旅行から帰るのは来年の春になります。その頃はトルーマン大統領はその地位にいないかもしれません。
明主様 ははぁ--、それでは私の方から直接、早く送り届けることにしましょう。

ブ博士 今日はいろいろ有益な話をうかがってありがとう御座いました……さようなら。
明主様 どうか無事に世界各国の宗教御視察をおえられますよう……さようなら。

(昭和二十七年七月九日)