バセドー氏病

喉の下に「甲状腺」といふのがある。そこへ水膿が溜結するので一見、喉の中央が出張ってゐるのであります。又此病気の人は、全体的に見ても喉が太いのであります。普通、甲状腺が脹れるといひますが、私の観る処では甲状腺の外部に水膿が溜結するのであります。

バセドーといふ人が発見した病気ですが、病が進むと眼が飛出るのが特徴で「眼の大きい人」に多いやうであります。そうして、悪化すると心臓を頗る悪くする。其結果「脈搏不正」又は結滞を来すのであります。普通は、治りいい病気であります。「姙娠すると危険だ」といって、人工流産させますが、私の経験上、そんな憂はないと思ふのであります。

(岡田先生療病術講義録 昭和十一年七月)