寸鉄活人 (栄光百十二号)

チャタレー問題は、要するに神経の問題だよ、検事はワイセツといい、文士はワイセツでないというのは、検事はワイセツに敏感だからであり、文士はワイセツに鈍感だからであるといふ訳なんだね、だから問題は読者にあるんだから、本を買った読者を全部呼出して犯人にすればいいんだ、それが公平な裁判じゃないか、どうじゃ拙者の頭はいいだろう 

赤痢流行りで、当局は外出から帰ったら、必ず手を洗えというとすると赤痢菌という奴は、随分巨(デ)っかいもんに違いないね、いっそ指で撮んだ方がいいんじゃないかと思うよ、之を当局へ献言する

赤は共産党ばかりかと思ったら左に非ずだね、見給え、火事流行り、赤痢流行り、人を殺して血を見るのが流行る、だから僕はそんなものは、赤んべーだよ

近頃は僅かな金を奪りたい為に、人間一匹を訳なく殺して了うのは、実に呆れた話だ、処がもっと恐ろしいのは、舌の剣で人を殺す奴だ、此舌の剣には猛毒があるから突かれたが最後、其毒の為に頭が悪くなって了い、罪を犯す事になるんだが、実は殺す奴も、殺される奴も此中毒者なんだから厄介だよ、つまり無神論中毒という奴さ、何と恐ろしい毒ではないか、処が此中毒を忽ち消して了う神薬を売る店があるんだから大したもんだよ、此店こそ皆さん御存知のメシヤ教なんだから、メシヤ教は謂わば解毒剤販売の大問屋という訳さ、サァーサァー皆さん、イラッシャイイラッシャイ、之が評判の毒消しやで御座イー

(栄光百十二号 昭和二十六年七月十一日)