寸鉄活人 (栄光百九号)

チャタレー問題、ドチラもガヤガヤ、検事はワイセツだという、被告はワイセツじゃないという、拙者からいえば斯んな問題は屁でもないよ、つまり見解の相違なんだ、被告は助平だから当り前の事だと思い、検事は助平でないから、怪しからんと思うだけの話さ、ドージャ、拙者の判断は確かだろう、というと誰かが、そりゃ違うよ、検事は肚の中は助平なんだが助平でないフリをしているんだよ

拙者は共産主義なんて主義なんかないと思う、あれは共産趣味なんだよ、何故かって、知れた事じゃないか、アンナにビクビクし乍ら危ない橋を渡って、年が年中縛られたり、ブチ込まれたりして苦しみ通しだ、そうまでしてもやめられないのは、つまりスリル趣味なんだよ

拙者は此間、蛙になって日比谷ケ原でギャアギャア鳴いてみたが仲々面白かったよ、何しろ、ブンブン唸ってる文化人や、五月蠅い蠅虫君や、米搗バッタ殿、蛆虫、デデ虫、オケラ、蟋蟀(コオロギ)、キリギリス、ガヂャガヂャ蜂の頭、イヤ之は脱線、間違ひ、本当は紳士、淑女、偉方、インテリ、ジャーナリスト等々の御歴々が、綺羅星の如くお集りで大したもんだよと、之は御世辞でも何でもない事もない

国鉄慌て出して安全施設にアップアップ、之は決して泥繩じゃない、泥棒が盗んで逃げて了ってから、やっとこさ繩をなひ始めたという訳さ

石油問題で、アチラ立てればコチラが立たぬ、コチラ立てればアチラが立たぬ、両方立てれば身が立たぬ、という訳で、エー面倒臭え、石油なんかイランよと言ったかどうだか

(栄光百九号 昭和二十六年六月二十日)