寸鉄活人 (栄光百八号)

之は寸鉄ではない、尺鉄である、今の世の中の、裏表をかいてみよう、先づ

(一)政治家は国民の利益を主眼とし、私を捨て公の政治を行う事、但し党の為なら、そこはそれ御都合次第と心得ていい事

(二)官公吏は絶対公平にして金銭や情実に動かされない事、但し止むを得ず融通を利かす場合もあるが、巧く法に触れないよう注意する事

(三)学校教師は、入学試験に当っては、厳正公平に及落を決める事、但し時節柄生活経済も考慮に入れる事

(四)会社重役は法規をよく守り株主の利益を第一とする事、但し、利益は出来るだけ表面へ出さないようにし、税法に最も堪能なる者を、如何なる高給を払っても、傭い入れる事

(五)司法官は、最も厳正公平に被告を扱い、仮令屁のような罪でも、罪人にして、成績を挙げ、出世の材料にする事、且法よりも面目を第一とし、感情を抑えないようにする事

(六)医師は病人に対し、学理上の通りの療法を行えばよい事、但し治る治らないは、病人の運次第であるから、そこ迄の責任は負わない事

(七)女とさえ見れば、出来るだけ親切にし、人格者らしく見せかけて尊敬させ、何事にも従わなければならない様にする、特に少々美人でなくも、金の有りそうな未亡人を狙う事、但し必要がなくなれば、後腐りのない様に、縁を切る事が肝腎なり、右の通り実行して、巧く世の中を誤魔化し出世をするのが利巧な行り方である。

但し右は一時的で、其後に来るものは、何層倍の苦しみであるから、それも前以て覚悟をしておく事、どうじゃ、判ったか

(栄光百八号 昭和二十六年六月十三日)