次に、風水害であるが、之は年々増加の傾向にさへあり、その防止に官民共に大いに悩んでいるのは衆知の事実である。其防止施設には頗る多額の費用を要するので、現在としては止むを得ず、一時的間に合せ手段で我慢するより外止むを得ないが、さりとて年々大きな被害を蒙っている以上、何とかしなければならない。せめて今の処被害を最小限度に喰ひ止めるより外致し方ないという訳だ。
処が、我自然農法によれば、作物の根張りがつよく、茎折れなどは現在のそれよりも何分の一に減るばかりか、花落ちも少なく、冠水後の稲の腐敗もないから、他田が相当被害を蒙る時でも、自然農法の田は被害という程の被害は認められない程で、人々は只不思議がるのである。其際根の元をよく調べて見ると、在来の有肥田のそれより、細根の数が非常に多く長いので、根張りが強靭な為である。之は人間に譬えれば毒分のない新鮮な食物を常に摂取していると、健康であるのと同様の理である。
又之はひとり稲や麦には限らないが、農耕者はよく作物の背丈が短く、葉が小さいのを可としているが、之は実付きがよく収穫が多いからで、此点本農法がそうであって、如何に理想的であるかが判るのである。而も品質優良で、美味な点は経験者の異口同音に唱える処である。という訳は今迄の如き、有肥によると、葉に栄養分をとられるから葉が延びすぎ、それだけ実に影響を与えるのである。
又自然農法によれば、稲の分蘖(ブンケツ)が頗る多く、今日迄最も優良なのは一粒の種で、分蘖百五十、粒数約一万五千という到底信じられない程の、驚異的記録もあった。(之は後段に載せたから参照されたい)尚今一つの特長は、稲藁を使用する場合、非常に強く細工が仕良いそうである。
(自然農法解説 昭和二十六年一月十五日)