物価高低の見方

よく物価の高低を質かれることがあるが、これは処世上、仲々馬鹿にならないことで、これを知ると知らざるとは、生活経済に至大の影響を及ぼす以上、大いに関心をもつべきである。ところが物価の見透し程実に簡単に判るものはないので、それを書いてみよう。

まず、万有一切は一の例外なく陰と陽とがある。夜あれば昼あり、冬あれば夏あり、朝あれば夕があり、男があれば女がありというように、この陰陽が交錯し、回転しつゝあるのは宇宙の実相である。

この理によって、物価の動きと雖もそれに外れる筈はない。よく山高ければ谷深しという言葉があるが、全くその通りである。流石の物価も最近に至って、漸次低落気味を現わし始めたが、然し、未だ諸物価は戦前の百倍から二百倍の値を保っている。全く箆棒に高い山が出来たのであるから、谷の深さも想像がつくであろう。そうして冬の極寒い時、何としても裸でも汗が出る夏の暑さを、誰が想像なし得るであろう。

それと同様、戦前の低物価時代、恐らく先ごろの如き、二百倍も三百倍もの高価になるとは夢にも思えないであろう。とすれば、右と同様、現在の高物価を見ながら、何れ、百分の一、二百分の一に低落しようとは、これまた夢としか思えないであろう。然しながら、夏の季節から冬の季節になるのは絶対必須である。いくら科学が進歩しても、こればかりはどうにもならないとすれば前途は明かである。