農業の大革命 飯米十割増産は易々たり

愈々、わが国民主食の自給自足時代の来った事を弘く天下に公表せんとするのである。全く驚異的農耕法は遂に完成したのである。茲にその真相を伝えるべく、本紙特集号を刊行する事となったので、国家の為洵に慶賀に堪えない次第である。

昔は兎に角文化日本となってこの方、農事に就ては各般の施設改良に腐心し官民共に不断の苦心努力を払いつつ来たに拘はらず、今以て予期の成果を挙げ得られないのは何故であらうかという事である。勿論それには原因がなくてはならないが其原因こそ従来の農耕法に一大誤謬のある事である。今其点を明かにすると共に、真の農耕法を発表し、吾等が永年唱え来った無肥料栽培法とは如何なるものであるかという事で、今やその理論を実施の結果、正に劃期的一大成果を挙げ得た事によって、最早一日の猶予もなり難く、茲に天下に発表し、全国農村に向って一大奮起を促すと共に、即時実行に移られん事を念願して止まない次第である。

先づ此革命的農耕法が如何に卓越せるかを左に列記してみる。
(一)金肥人肥は一切使用せず、ただ堆肥のみで足りる事
(二)従って、高価な金肥購入の必要なく、施肥の労力も不用となる事
(三)虫害は殆んど皆無となる、何となれば害虫発生は金人肥が原因であるからである
(四)量目が増し、品質優良美味である事
(五)人肥を使用せざる為、近来大問題とされている、寄生虫の危険なき事
(六)風水害に遭うも草質強靭なる為殆んど被害を受けない事

右の如く、増産以外の有利なる点も多々あり、実に想像もつかない劃期的空前の農耕法である。此実際を知るに於て、今日迄の農耕法が如何に誤ってゐたかが判るのである。吾等からみれば、従来の農耕法は好んで、苦難の途に迷ひ込み、喘ぎ苦しみつつあったといふ事実で、茲に天の時到って全農民を挙げて光明の道へ誘ひ幸福者たらしめんとするのである。国民生活上、最重要なる食糧問題が一挙に解決出来るという本農法の実施が、再建日本の前途に如何に大なる光明を齎らすかは表現の讃辞さへないであらう。

別項、多数に上る実地報告を一読すれば、何人と雖も疑う余地はあるまい。然し乍ら、初めて見る人の為に本農法の原理を概略説明の必要もあらうから茲にかくのである。抑々本農法の原理は、今日迄永い間金肥人肥の毒素によって土壌を殺して来た事に気がつかなかったのである。それを反対である生かす方法こそ本農法の根本義である。というのは従来の農耕法の大誤謬は、土壌本来の力を無視し、作物は金肥人肥によらなければ充分な成果を挙げ得られないと固く信じて来た事である。之を判り易くいえば、近来流行のアドルムやモヒ中毒と同様で、人間一度此中毒に罹るや、薬が切れると人間活動が出来なくなる。丁度そのやうに肥料中毒に罹ってゐる土壌は肥料が切れると、土壌の活力発揮が出来ないという訳である。

実例報告にもある如く、無肥料実施の第一年目は例外なく、最初の数ケ月間は葉色悪く、茎細く、如何にも貧弱なので、隣人からは嘲罵を浴びせられ、本人も非常に心配するが之全く肥毒の為で、土にも種子にも肥毒が充分含まれてゐるからである。処が、その後成熟期が近づくに従って漸次好転し初めるのは、肥毒が漸減するからで、漸次土本来の活力を取り戻すからである。故に一年目より二年目、二年目より三年目というように年を追うて収穫が増すのは、肥毒漸減と正比例するからである。従って無肥料栽培三年以後ともなれば、最低五割乃至十割の増産は確実である。

我国昨年度の産米六千三百万石であったから五割増産は正に九千四百五十万石となり、現在人口八千二百万人に対し、此上一億位増したとしても、実に余裕綽々たるものがある。のみならず米以外の雑穀、薩摩芋、馬鈴薯、豆類等、凡ゆる物も増産となる以上、食糧問題の危惧は全く解消して了うのである。右は最低を規準としての予想であるが、実際は十割乃至二十割の増産は可能であるから、数年後は食糧大増産に悲鳴を挙げる嘘のような時節が来るとしたら今から其対策を講じおく必要もあるであろう。

而も、労力は半減する以上、世界的有名な日本農民の労働過重も一挙解決するのみか、肥料代其他の経済的利益も加わる以上、茲に農村の黄金時代は出現し天国は農村からという事も決して痴人の夢ではあるまい。

今一つ言いたい事は、此一大福音を天下に発表するに就ては、本教の宗教宣伝に用いるように思われ易いが、其様な意図は毫もなくただ斯の如き空前の一大発見を一刻も早く知らしめ、苦悩に喘ぐ農民を救い国家の繁栄に資せんとする以外他意はないのである。又実例中にある浄霊であるが、之は勿論大いに効果はあるが、そのような信仰的手段をとらずとも、単なる堆肥のみの栽培で五割以上の収穫は確実である事を附言しておくのである。

(救世六十三号 昭和二十五年五月二十日)