医学断片集(二十五) 鉄剤

よく菠薐草(ホウレンソウ)は鉄分を含んでいるとか、何々は鉄分があるから服んだ方がいいなどと言われるが、これも変な話である。何故なれば人間の身体には、そんな金属成分は害にはなっても、益にはならないからである。この話が出ると私はいつも曰うのである。若し本当に鉄分が可いなら、釘を煎じて服んだら大いに可いではないかと大笑いをする。

処が近来鉄を粉末にして服ませる療法があるそうだが、斯うなると今に火薬を服むのが可いということになるかも知れない。これについてハッキリ言ってみると神様が鉄を造られた目的は、船とかレールとかの交通上必要なもの、建築材料、切れ物、家庭の器具等の用途に用いる為で、人間が腹の中へ入れる物でないことは余りに明らかな道理である。というように一切は常識で判断すれば、自から用途が分る筈でこれが真理である。

(栄光百九十号 昭和二十八年一月七日)