結核亡国論

今日本に於て、結核は非常な勢いを以て蔓延しつつある事は衆知の通りである。而も始末の悪い事は、実際上患者の総数も、死亡率も本当の事は全然判らないのである。何となれば当局が発表した数字によれば、二十年前も患者数百五十万、一割の死亡とみて十五万と言われたが、十年前も同じ数であり、今も同数である。としたら如何に出鱈目であるかが判るであろう。然し実は之も無理はないかも知れない。というのは結核は伝染病とされてる以上、出来るだけ世間に知られないようにする。万が一死亡しても死亡診断書は、特別の事情のない限り、他の病気にして届けるのは、今日常識とさえなっている位だから、正確な数字は到底得られないのは当然である。それに就て、去る一月廿六日発行の日本婦人新聞に、左の如き記事が出ていた。

病おし、教壇に
捨ておけぬ“結核教員”
東京都教育庁では都内全部の高、中、小学校に現在勤務中の教職員に就て、結核検診を行い、昨年暮迄に全員終了した。これによると、結核に冒されて教壇に立っている者が、意外に多い事が判り、早急に対策を考える事になった。

即ち都立教職員約三万一千名中、六カ月から二カ年程度長期欠席によって、休養を必要とする者が、二万六千七百名以上もあり、既に二年以上欠席し退職させられたものも百余名もあるという状態である。之等のうちには特に悪質で生徒への感染危険の者もあるので、直ちに休養をさせねばならぬ者も、相当数あるものとみられている。

それで東京都では昨年秋の長野県の学童集団結核の例もあるので、患者に対して直ちに休養するよう所属学校長に勧告する事になっている。しかし現在都立教員結核療養所は増築中の五十床(一床二十万円)を合せても百三十床しかないので、二十六年度予算で湘南方面の旅館かホテルを買収して二百床を増設する計画を進めている。

又現行法では教員の休職は二年しか認められておらず、それ以上になると退職するか、さもなければ病気のまま教壇に立つかの二道しかあたえられていない。処が結核の完全療養には二年間では無理なので、教育庁では更に一年の休養期間を認めるよう教育委員会とはかり研究中である。

右の事実をみて、驚き怖れないものはあるまい。之でみると都立教員殆んど全部と言っていい位結核容疑者である。実に之程重大問題はあるまい。としたら一体どうしたらいいのか、此人達は最も結核が感染し易い、小学児童に接するに於てをやである。何よりも昨年末、長野県の某村で小学児童を検診した処、百人中八十一人の結核容疑者があったので、県下の大問題となったという新聞記事があった。其後各地に於ける同様の記事が、頻々新聞に出ているに見ても事態は最早放って置けない処まで差迫っている。従って此儘で解決出来ないとしたら、先づ次代の国民の大部分は、結核患者又は結核容疑者たる事は間違いあるまい。といって此危険を完全に防止するには現在の結核教員全部を隔離しなければならないが、之は実際上到底出来ない相談である。斯うみて来ると、今や前へも後へも行けないというジレンマに陥っている現状である。

而も右の記事にある如く、結核教員は六カ月乃至二カ年の療養を要すと云っているが、実はそれでも足りないというのである。而も現在能う限りの設備をしても、たった二百床しか出来ないという始末では、患者の数からみて、全然問題にはならない。然し乍ら、右の日数で完全に治ればまだいいとしても、事実はそう易々と治らない事は、今日迄の幾多の実例に徴するも極めて明かである。先づ吾々の推定によれば百人中八、九十パーセントは、散々療養の結果、死亡する事は先づ間違いはあるまい、としたら之等に要する国家のマイナスは、頗る大きなものがあろう。

而も、右はひとり小学校教員だけの問題ではない。実は現在の日本人全体に渉って結核患者は益々増加しつつあるのは事実である、としたらどうしても判らない事がある。之程国民衛生が発達し、近来結核検診も段々行き渡り、早期発見の方法も大いに進歩したのであるから、それに準じて結核は漸減しなければならない筈である。にも拘わらず現実はそれを裏切って嘲笑するかの如く、益々増えつつある。之程理屈に合わない話はないではないか、処が未だ理屈に合わない事がある。それは此矛盾に対して、当局も専門家も何等疑いを起さないばかりか、益々同一方法を猪突的に拡充している事である。

茲で、吾々は此事実に対し、冷静に検討してみよう。先づ結果論から言ってみれば今迄当局が行って来た結核対策なるものは、或は反対方法ではないかという疑問である。若し此疑問が起らないとすれば、結果も何も眼に入らない程に、現代医学を盲信しきっている為と言えよう。従って、此儘で推移するとすれば、数十年を待たずして日本人全体が結核患者となる時が来ないと誰か言い得よう。実に由々しき大問題である。恐らく第三次戦争よりも、寧ろ大きいかも知れない。

最後に、吾々は警告したい事がある。それは、現在の結核対策の全然誤っている事で、其證拠は右の如く事実が示している。処が吾々の浄霊療法によれば、容易に短時日に而も確実に撲滅し得る事で、此生きた実例は本教刊行の新聞、雑誌に掲載しきれない程多く集って来る。只然し最も困難である事は、右の如く実際を示し、結核を完全に治すといっても、仲々受入れられない現代人の頭脳である。何よりも現代人の考え方の最も間違っている点は、事実よりも理屈の方を重視する傾向である。之が妨害となっているので、此点に目覚め、白紙となって充分検討する事を切望して歇まないものである。

(栄九十一号 昭和二十六年二月十四日)