病気とは何ぞや

古来、病気なるものは、その原因として、仏説には四大調和の破綻とか仏罰、漢方医学に於ては五臓六腑の不均衡、西洋医学に於ては、ウィルヒョウの細胞衰滅説、コッホの黴菌による伝染説等、幾多の理論学説等あるが、何れもが病気なるものを災厄とし、悪い意味に解せざるものはないのである。然るに私が発見した所によると、右とは全く反対であって、病気とは、造物主が人間に与へた最大な恩恵であって、人間は病気に罹るが為に健康を保持し、長寿を保ち得るのであって、此真諦が判れば、神に感謝せずにはおれないのである。斯の如き事をいへば、世人は狂人と思ふかもしれない。それは、コペルニクスやガリレオの地動説もニュートンの引力説も、狂人扱ひにされたと同じやうに。然し、真理は飽迄真理である。従而、此書を読む方々は、先入的観念をかなぐり捨てて、全くの白紙になって熟読せられたい事である。

(医学試稿昭和十四年)