凡そ、天地一切有りと凡ゆる物の原素としては、大別して、私は三つに別けます。その三つは何かといふと、火と水と土であります。如何なる物と雖も、火と水と土に関りのないものは決して在るはづがない。否、火と水土それ自体が此宇宙であり、万物の実体であるのであります。そうして、火水土そのものの中心即ち根源は何であるか、申す迄もなく、火は太陽であり、水は月球であり、土は地球であります。そうして、此火水土を経と緯とからみますと、経は日月地-即ち太陽が一番上で、中間に月球があり、一番下に地球があります。之は日蝕の時に天を仰げばそういふやうになってゐます。太陽面を中間の月球が隠す-といふ現象がよく証明しております。
次に、緯は如何であるかといふと、之は経のやうに段階的ではなく、全体的密合であって、火と水と物質それ自体が一つの存在になってゐるのであります。例へていへば、此空間そのものは、火と水の調和であります。即ち、火の熱と水の霊と密合調和して、生物の存在生活し得らるるやうに出来てゐるのであります。若し、火ばかりであればそれは一瞬にして爆発し、否爆発も起らないで、無の世界になって了ふのであり、水そのものばかりとすれば、氷結の塊が存在し、それ以外は「無の世界」になるのであります。
此理をもっと解り易くいへば、火の燃ゆるといふ事は水気があるからで、水気が無ければ、火は燃えず、恰度真空の中で火を燃そうとするが如きものであります。又、水の流れ、雲の動き、水蒸気等の動的現象は火の熱に因るので、火気が無ければ氷結の塊となる丈であります。
(医学試稿 昭和十四年)