序論 人類救済の大本願

抑々、人類の悩みは何ぞやといふと、大体病貧争の三つに帰するであらふ。併も、其三つの中に於て、病気の悩み程深刻なるものは蓋しあるまい。貧の原因の大方は、病気からと言っても過言ではなく、又、世上幾多の紛争は殆んど、経済問題に端を発すると言ひ得るのである。従而、病気の根絶、病人の無い世界なるものが儻(モ)し、出現するとしたならば、凡ての悩みは解決すべく、真に之こそ、人類空前の大福音でなければならない。然し乍ら、斯の如き、釈迦基督さへ企及しなかった、大胆なる経綸は、到底、痴人の夢としか思はれないであらふ事は、無理からぬ事である。それは、過去幾千年の歴史に捉はれて見るからである。

然し乍ら、その歴史なるものも、眼光紙背に徹すれば、諸々の聖賢、偉人、開祖等の予言に、来るべき地上天国、五六七(ミロク)の世、救世主の出現等は、明かに記述されてあるのを知るであらふ。唯、その時が秘せられてあったまでである。

茲に、天の時来って、愈々、幾多の予言の実現は、目前に迫り来ったのである。今や、大光明世界は建設せられんとするのである。人類の不幸災厄は跡を絶ち、人は、半獣の殻を破って、真に万物の霊長たる域に、飛躍する時となったのである。此二度とない、永劫に光栄ある大神業の根本経綸としての、日本医術なのであって、之即ち、大聖観世音菩薩の大本願の顕現であるのである。

(日本医術講義録 昭和十年)