此病気は特に日本人に多いのである。種類に於ても、痔瘻、痔核、出血、周囲炎、脱肛等あるが、何れも非常に治りいいのである。
痔瘻は三毒が浄化作用によって肛門の一部へ穿孔し、そこから排泄されるのである。従而、自然療法によって治癒すべきであるが、医療は手術によって肛門際の滞溜せる毒素を除去し穿孔を閉鎖するに於て一時は治癒したと思うが、時日を経て、元来身体内部に在る毒素であるから再び肛門に集溜するのである。然し、其場合手術によって閉鎖されたる最初の穿孔部を避けて、再び穿孔するものである。其際患者は、第一回の手術の効果なきを知って二回目の手術を厭ひ、薬物塗布等の療法をするのである。故に薬毒が粘膜を靡爛せしめ、人により穿孔が数個所になり、靡爛と共に、薬毒の刺戟によって痛苦甚しく、患部は二目に視られぬ状態を呈するのである。
痔核は、外痔核と内痔核とあって、肥満せる人は内痔核が多く、痩せたる人は外痔核が多く、又左右孰れかであって、小は小豆大位より、大は指頭大位であって、之も自然療法によってよく治癒するのである。
痔出血は浄化作用によって、毒血が一旦肛門部に集溜し、便通の際溢出するのであるから、之は健康上特にいいのである。故に、此毒血が全部排泄すれば完全に治癒するのであって、此為頭痛、肩の凝り等頗る軽快になるのである。
肛門周囲炎は肛門の周囲が絶えず湿疹的に痒み、又は痛むのである。原因は三毒が肛門部に集溜し粘膜を濾化浸潤するのである。自然療法で治癒するが、時日は非常に長くかかるのである。
脱肛は一種の習慣性病気であるから、原因を除去すれば漸次治癒するのである。其原因は、便所の長いのと便秘による息みである。従而、排便の時間は一回五分程度とする事、それは今迄廿分かかった人は五分宛四回にゆくといふやうにすれば、漸次三回になり二回になり一回になるものである。便秘の方は便秘の項目に療法を述べる事にする。
(医学試稿 昭和十四年)